鉄道さんというより、きっと西武帝国の日々。
ぴくしぶにアップした小話。
ネタバレ?かもしれないので、続きに置きますー。
ネタバレ?かもしれないので、続きに置きますー。
「まあるい夏の」
ふわりと爽やかな香りが鼻をくすぐった。
ふうわりと意識が覚醒する。
「ふわぁ……」
由は瞼を開いた。
途端、ごろんごろんと鈍い音が響く。
柑橘の香りが広がる。
「……さがのさん…………」
己を覗き込んでいた男の名を呼ぶ。
「三個か……」
「……何やってるんですか……」
由は起き上がり、周りに転がっている黄色いものを拾った。
「何これ……」
「夏みかんだろ。そんなことも知らないのか」
男のにべもない返事に由は眉を寄せる。
「そういう意味じゃなくって……」
由は溜息をついた。
素気ない態度をとるくせに、彼は足しげくこの場所に通う。
今では由しかいない神社に。
「やるよ」
「え?」
「それ」
ごろごろと転がっている夏みかん。
それを一個拾って手の上に。
「さがのさんは、食べたの?」
「ああ?……まあな」
まさか皮ごと食べたのかと重ねて問いたい気持ちは押し込める。
「ふうん……」
鼻孔をくすぐる酸性の香り。
それを嗅いでいると、嵯峨野は立ち上がった。
「……行くから」
「あ、うん」
由はそれを座ったまま見上げる。
目と目が合った瞬間、何か浮かんだが、言葉になる前に消える。
「さがのさん、またね」
「………………」
嵯峨野もまた何か言いたげな表情だったが、何も言わなかった。
くるりと背を向けて、立ち去った。
「…………何で来るんだろうね、あの人」
その問いかけを聞いていたのは、黄色いまあるい夏みかんだけ。
ふわりと爽やかな香りが鼻をくすぐった。
ふうわりと意識が覚醒する。
「ふわぁ……」
由は瞼を開いた。
途端、ごろんごろんと鈍い音が響く。
柑橘の香りが広がる。
「……さがのさん…………」
己を覗き込んでいた男の名を呼ぶ。
「三個か……」
「……何やってるんですか……」
由は起き上がり、周りに転がっている黄色いものを拾った。
「何これ……」
「夏みかんだろ。そんなことも知らないのか」
男のにべもない返事に由は眉を寄せる。
「そういう意味じゃなくって……」
由は溜息をついた。
素気ない態度をとるくせに、彼は足しげくこの場所に通う。
今では由しかいない神社に。
「やるよ」
「え?」
「それ」
ごろごろと転がっている夏みかん。
それを一個拾って手の上に。
「さがのさんは、食べたの?」
「ああ?……まあな」
まさか皮ごと食べたのかと重ねて問いたい気持ちは押し込める。
「ふうん……」
鼻孔をくすぐる酸性の香り。
それを嗅いでいると、嵯峨野は立ち上がった。
「……行くから」
「あ、うん」
由はそれを座ったまま見上げる。
目と目が合った瞬間、何か浮かんだが、言葉になる前に消える。
「さがのさん、またね」
「………………」
嵯峨野もまた何か言いたげな表情だったが、何も言わなかった。
くるりと背を向けて、立ち去った。
「…………何で来るんだろうね、あの人」
その問いかけを聞いていたのは、黄色いまあるい夏みかんだけ。
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