鉄道さんというより、きっと西武帝国の日々。
長野さんと東北上官。
健全なので安心(何)
四月。
街には着慣れない制服やスーツに身を包んだ若者が溢れる季節。
どの業種も新人が入社してきた。
長野新幹線は見慣れない若者の前で困惑していた。
「関係者以外立ち入り禁止」の張り紙が貼られたドアの前。
そこに見たことがない顔の青年が立ちはだかっていた。
「だから、通してください。会議におくれてしまいます」
「だから、ここは立ち入り禁止なの。親は何処へ行ったの」
「ぼくは長野しんかんせんです。そこを通してください」
「またそんなことを言って。新幹線になりたいのはわかったから、さっさとパパとママのところへお帰り」
「だから、」
先刻から続く押し問答。
会議の時間が迫っており、長野新幹線はとても困惑していた。
今まで遅刻をしたことはない。
定時運行たれと東海道新幹線に強く教えられた。
そして、誰よりも早く着いていることにひそかな誇りを感じていた。
それが、こんなところで足止めなんて。
「ほら、早く行って」
猫を追い払うように言われて、悲しくなった。
自分は新幹線なのに。
何故この人は信じてくれないのだろう?
「ぼくは――」
もう一度口を開きかけた時、若者の背後のドアが開いた。
「あ、」
今度こそ泣きそうになった。
困惑ではなく、安堵で。
「長野」
そう呼んだのは東北新幹線だった。
それともう一人、年輩の男性を連れている。
「東北せんぱい!」
味方が現れたことで自然と笑みがこぼれる。
「この子供の知り合いですか?さっきから、入れろってうるさいんですが」
くだんの若者が年輩の男性に話しかける。
男性は顔色を変えた。
「子供とは何だ!この方は長野新幹線だ!」
それから、長野新幹線に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません。入社したばかりで、知らなかったようです。おまえも謝れ!」
「……申し訳ありませんでした」
不承不承、若者も頭を下げる。納得はしていないようだった。
「それは今後気をつければいい。それより会議が始まる。行くぞ」
応じたのは東北だった。長野はその顔を見上げて頷いた。
「はい!」
背を向けた東北新幹線の後をついていく。
足早に歩く東北新幹線を懸命に追いながら、長野はぽつりと言った。
「……ぼく、おとなになりたいです」
揃いの制服を着ているのに、新幹線だと信じてもらえなかった。
それが悲しかった。
「…………」
東北新幹線が見下ろした。
「お前は新幹線だ」
「はい……?」
返事をしながらも、何を言っているのか分からなくて小首を傾げる。
「身なりは小さいかもしれないが、お前は立派な新幹線だ」
「…………」
長野は目をぱちくりと瞬いた。
東北は歩く速さを緩めた。それで、長野新幹線は東北新幹線と並んで歩くことができた。
「ぼく、りっぱですか?」
「お前ほどできた新幹線はないだろう」
「ぼくは、そんなには……」
「会議には誰よりも早く来ているし、報告書もやり直しはほとんどないだろう?」
「はい」
長野にとって、それらは当たり前のことで、何処が立派なのかよく分からなかった。
ただ東北新幹線が表情を緩めたので、それが嬉しかった。
「だから、お前が気に病むことはない」
「あ……、」
ようやっと東北が言いたかったことが伝わって、長野は大きく目を開いた。
「はい!」
だから、大きな声で返事をした。
と、突き当たりのドアが開いて、秋田新幹線が顔を出した。
「長野!よかった!」
「?何がですか?」
秋田新幹線は長野に走り寄った。
「いつも一番に来てる君がいなくて、それで東北が心配して探しに行ったんだよ」
「……え?」
長野新幹線は隣の東北新幹線の顔を見上げた。
「東北せんぱい……」
「もう会議が始まる。行くぞ」
東北新幹線は長野の肩に手を置いた。
長野はこれ以上ないといった最上の笑顔で頷いた。
「はい!」
前を向いた東北新幹線の横顔はいつもと同じ表情を浮かべていたが、長野は幸せな気持ちになった。
照れている時も同じ表情だと知っているから。
そして、揃いの濃緑の制服を着た三人は会議室に入って行った。
四月一日ですが、エイプリルフールではなく、新入社員ネタでした。
辻原さんは、子供→大人カプが好きっぽいです。
西武有楽町→西武池袋とか。
今更ですか。そうですか。
健全なので安心(何)
四月。
街には着慣れない制服やスーツに身を包んだ若者が溢れる季節。
どの業種も新人が入社してきた。
長野新幹線は見慣れない若者の前で困惑していた。
「関係者以外立ち入り禁止」の張り紙が貼られたドアの前。
そこに見たことがない顔の青年が立ちはだかっていた。
「だから、通してください。会議におくれてしまいます」
「だから、ここは立ち入り禁止なの。親は何処へ行ったの」
「ぼくは長野しんかんせんです。そこを通してください」
「またそんなことを言って。新幹線になりたいのはわかったから、さっさとパパとママのところへお帰り」
「だから、」
先刻から続く押し問答。
会議の時間が迫っており、長野新幹線はとても困惑していた。
今まで遅刻をしたことはない。
定時運行たれと東海道新幹線に強く教えられた。
そして、誰よりも早く着いていることにひそかな誇りを感じていた。
それが、こんなところで足止めなんて。
「ほら、早く行って」
猫を追い払うように言われて、悲しくなった。
自分は新幹線なのに。
何故この人は信じてくれないのだろう?
「ぼくは――」
もう一度口を開きかけた時、若者の背後のドアが開いた。
「あ、」
今度こそ泣きそうになった。
困惑ではなく、安堵で。
「長野」
そう呼んだのは東北新幹線だった。
それともう一人、年輩の男性を連れている。
「東北せんぱい!」
味方が現れたことで自然と笑みがこぼれる。
「この子供の知り合いですか?さっきから、入れろってうるさいんですが」
くだんの若者が年輩の男性に話しかける。
男性は顔色を変えた。
「子供とは何だ!この方は長野新幹線だ!」
それから、長野新幹線に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません。入社したばかりで、知らなかったようです。おまえも謝れ!」
「……申し訳ありませんでした」
不承不承、若者も頭を下げる。納得はしていないようだった。
「それは今後気をつければいい。それより会議が始まる。行くぞ」
応じたのは東北だった。長野はその顔を見上げて頷いた。
「はい!」
背を向けた東北新幹線の後をついていく。
足早に歩く東北新幹線を懸命に追いながら、長野はぽつりと言った。
「……ぼく、おとなになりたいです」
揃いの制服を着ているのに、新幹線だと信じてもらえなかった。
それが悲しかった。
「…………」
東北新幹線が見下ろした。
「お前は新幹線だ」
「はい……?」
返事をしながらも、何を言っているのか分からなくて小首を傾げる。
「身なりは小さいかもしれないが、お前は立派な新幹線だ」
「…………」
長野は目をぱちくりと瞬いた。
東北は歩く速さを緩めた。それで、長野新幹線は東北新幹線と並んで歩くことができた。
「ぼく、りっぱですか?」
「お前ほどできた新幹線はないだろう」
「ぼくは、そんなには……」
「会議には誰よりも早く来ているし、報告書もやり直しはほとんどないだろう?」
「はい」
長野にとって、それらは当たり前のことで、何処が立派なのかよく分からなかった。
ただ東北新幹線が表情を緩めたので、それが嬉しかった。
「だから、お前が気に病むことはない」
「あ……、」
ようやっと東北が言いたかったことが伝わって、長野は大きく目を開いた。
「はい!」
だから、大きな声で返事をした。
と、突き当たりのドアが開いて、秋田新幹線が顔を出した。
「長野!よかった!」
「?何がですか?」
秋田新幹線は長野に走り寄った。
「いつも一番に来てる君がいなくて、それで東北が心配して探しに行ったんだよ」
「……え?」
長野新幹線は隣の東北新幹線の顔を見上げた。
「東北せんぱい……」
「もう会議が始まる。行くぞ」
東北新幹線は長野の肩に手を置いた。
長野はこれ以上ないといった最上の笑顔で頷いた。
「はい!」
前を向いた東北新幹線の横顔はいつもと同じ表情を浮かべていたが、長野は幸せな気持ちになった。
照れている時も同じ表情だと知っているから。
そして、揃いの濃緑の制服を着た三人は会議室に入って行った。
四月一日ですが、エイプリルフールではなく、新入社員ネタでした。
辻原さんは、子供→大人カプが好きっぽいです。
西武有楽町→西武池袋とか。
今更ですか。そうですか。
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